日本で最初の「勤労奨学生制度」

2016年10月1日掲載

学校工場でFM受信機を製作

学内の事務補助などの勤労に対し返済不要な奨学金を給付する勤労奨学金制度。いくつかの大学で実施されているこの制度を1956(昭和31)年、日本で最初に導入したのが東海大学なのです。

終戦から10年余り経過し教育の機会均等が標榜されたとはいえ、わが国には、経済的な理由や様々な事情で、高校や大学教育を受けられない若者が少なくありませんでした。そうした若者に働きながら学べる環境を提供しようと、東海大学は、電気メーカーと提携し学内に学校工場を開設、学生が授業を受けながら、同じキャンパス内にある学校工場で電気機器の製作に従事し奨学金を受け取ることができる勤労奨学生制度を実施したのです。しかも学生寮に入ることで、ほぼ奨学金で生活費を賄うことができました。初年度の1957(昭和32)年、26名の学生が入学、2年目には定員の6倍の応募があるほどでした。

さらに1958年から東海大学がFM放送の実験局を開局し、FM放送による通信教育を開始すると、当時まだ高価だったFMラジオ受信機を、学校工場で独自に生産し、安価で提供することを可能にしました。これにより、さらに教育の機会を多くの人に提供することになりました。

学校工場で電気機器を組み立てる勤労学生(1963年頃)
学校工場で生産されたFMラジオ(1963年頃)