原子力の平和利用をめざして技術者養成

2017年7月26日掲載

日本で初めて本格的専門教育を開始

1956年、東海大学は工学部応用理学科に原子力に関する技術者養成を目的とした原子力工学専攻(現・原子力工学科)を開設しました。これは、国立大学の原子力関係の講座設置にさきがけたもので、わが国の大学における最初の原子力専門課程となりました。

1953年、当時のアイゼンハワー米国大統領が原子力の平和利用を提唱したことを契機に、わが国でも原子力への関心が高まりました。しかし、原爆投下直後の広島と1954年のアメリカの水爆実験による第五福龍丸の被害調査に携わり、核の威力の恐ろしさを身をもって体験していた松前重義は、原子力利用は国際的な平和を前提とすべきで、人材育成など環境整備を急ぐべきと訴えました。

こうした中で松前は、スイスで開催された国連主催の原子力平和利用国際会議に国会議員代表団の一員として出席。さらに欧米の原子力施設を視察して、各国の原子力利用政策と研究が大きく進展しているのに対し、わが国の遅れを痛感せざるを得ませんでした。そこで松前は、まず原子力の平和利用に関する法律の整備とこれを管理・推進する行政機構の確立を提唱し、1955年原子力基本法の制定、1956年科学技術庁の設置を実現しました。

東海大学工学部原子力工学科は、開設以来、多くの原子力技術者を送り出してきました。東日本大震災以降、原子力発電への議論が高まっていますが、継続か廃止かいずれの道を選択するにしても、原子力に関する専門知識を持つ研究者、技術者は不可欠であり、その重要性はますます高まっています。

イギリスの原子炉視察(1955年/右から2人目が松前重義)
原子力工学専攻の設置を報じる「東海大学新聞」(1955年11月)
原子力工学科の原子炉シミュレータによる実習