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【研究発表】 10代の自殺未遂、約8割が「誰にも相談せず」 高度救命救急センターへの搬送症例から実態を解明 ~苦しみを言葉にできないケースも多数~
2026年05月18日
東海大学[伊勢原キャンパス]医学部医学科総合診療学系精神科学領域の三上克央教授と国立健康危機管理研究機構国立国府台医療センター児童精神科の宇佐美政英診療科長を中心とする共同研究グループは、自殺未遂により東海大学医学部付属病院高度救命救急センターへ搬送され入院した18歳未満の患者100人を対象に、未遂前に自殺念慮(死にたい気持ち)を周囲に打ち明けていたかといった内容を含む未遂者の臨床的特徴を調査しました。
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<本研究のポイント> ●対象者の76.0%が、未遂前に誰にも自殺念慮を相談していなかった ●対象者の86.0%は、家族に自殺念慮を打ち明けていなかった ●対象者の70.0%は、自殺の動機に該当する内容を日常的に誰にも相談できていなかった ●以上の相談のしにくさに男女差は認められず、性別を問わず共通する課題であることが示された ●今後は、家庭・学校・地域が連携し、安心できる関係性と多職種による支援体制を整えることが重要と考えられた |
その結果、76.0%が誰にも相談しておらず、86.0%は家族に話していなかったことが明らかになりました。本研究は、診療の一環として自殺未遂直後の子どもと保護者から確認された内容を検討したものであり、子どもの自殺予防において「相談できないこと」が深刻な課題であることを示しています。本研究は、2026年4月24日付で国際学術誌『Child psychiatry & human development』に掲載されました。
■研究背景
日本では、10~19歳の男女における死因の第1位は「自殺」であり、子ども・若者の自殺は深刻な社会問題となっています。一方で、実際に自殺未遂に至った子どもが、未遂前に自殺念慮をどの程度周囲へ相談できていたのかについては、十分な検証が進んでいませんでした。これまでの先行研究の多くは、質問紙調査に基づくもので、救急医療の現場において自殺未遂した直後の子どもと保護者から確認された内容の研究はほとんどありませんでした。本研究は、未遂直後の実態を捉えた点に大きな意義があります。
■研究概要
本研究は、国立健康危機管理研究機構国立国府台医療センターとの共同研究として実施された登録研究であり、2019年2月から2024年11月までに、東海大学医学部付属病院の高度救命救急センターへ自殺未遂で搬送され入院した18歳未満の患者100人を対象としました。
精神科医チームが、通常の診療として本人と保護者を診察し、精神医学的評価・診断、通院歴、自傷行為歴、自殺未遂歴、自殺念慮を相談した相手、学校生活の状況、自殺未遂の方法や動機などを評価しました。本研究は、これらの項目に男女差があるかについて、統計学的に検討されました。
■調査結果
- 対象者:100人(女性75人、男性25人)
- 対象者の76.0%(女性73.3%、男性84.0%)が、自殺未遂前に自殺念慮を誰にも打ち明けていなかった(有意差なし)
- 対象者の86.0%(女性84.0%、男性92.0%)は家族に話せていなかった(有意差なし)
- 「相談相手がいた」と答えた対象者は24.0%で、最多の相談相手は「家族」、次いで「友人」だった
- 自殺未遂の理由は「不明確・曖昧」が最も多く、本人が苦しみを言語化できないケースが目立った
- 対象者のうち94人は学生・生徒・児童で、そのうち59.6%が、現在または過去に学校生活の困難を抱えていた
- 自殺企図手段は過量服薬の割合が最も高かったが、男性は女性より、過量服薬以外の方法を選ぶ割合が有意に高かった
■社会的意義・今後の展開
本研究では、自殺未遂に至った子どもが、性別を問わず自殺前に身近な人へ相談できていない実態が明らかになりました。また、自殺未遂した子どもは、長期にわたり相談できない状況にあったことが示唆されました。このような子どもの自殺予防では、「相談するように促す」だけでは不十分であり、本人が言葉にできない段階から支える環境づくりが求められます。具体的には、日常的な会話を通じた家族関係の構築、学校における安心できる居場所づくり、さらに地域全体での多職種による支援体制の整備が重要と言えます。
■研究費
本研究は、国立健康危機管理研究機構の研究助成金(番号:24A1014)により支援を受けて実施されました。
■論文情報
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タイトル |
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Silent suicidal ideation: Low rates of disclosure among children and adolescents who attempt suicide(表出されない自殺念慮:自殺企図を行った児童と青年における開示率の低さ) |
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著者 |
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松成 夏美¹、三上 克央¹、鈴木 遥子¹、髙世 駿也¹、澤口 範真²、大西 雄一¹、髙橋 有記¹、佐々木 祥乃³、辻井 農亜⁴、渡邉 己弦¹、宇佐美 政英⁵、山本 賢司¹ ¹ 東海大学医学部医学科総合診療学系 精神科学領域 ² 東海大学医学部付属病院 診療技術科 ³ 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学分野 ⁴ 富山大学附属病院 こどものこころと発達診療科 ⁵ 国立健康危機管理研究機構国立国府台医療センター 児童精神科 |
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DOI |
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10.1007/s10578-026-02008-4 |
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URL |
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<研究に関するお問い合わせ> 東海大学医学部医学科総合診療学系精神科学領域 三上克央 TEL. 0463-93-1121(代表)
<本件に関するお問い合わせ> 東海大学医学部付属病院事務部事務課(広報) TEL. 0463-90-2001(直通) Email:prtokai@tokai.ac.jp |

