駿河湾で深海魚の新種を発見~クサウオ科の新種を「Paraliparis ruficometes(標準和名:オナガインキウオ)」と命名~

2018年08月28日

Paraliparis ruficometes(オナガインキウオ) 標準体長 80.4 mm
東海大学海洋学部 水産学科の福井篤研究室に所属する大学院生 村﨑謙太(大学院生物科学研究科博士課程2年)らの研究グループは、駿河湾で採集した深海魚がクサウオ科の1新種であると提唱、「Paraliparis ruficometes(標準和名:オナガインキウオ)」と命名し、8月12日(日)に日本魚類学会発行の学会誌『Ichthyological Research』のオンライン版に掲載されました。(https://link.springer.com/article/10.1007/s10228-018-0656-1)

 同研究グループは、2014年から17年にかけ、本学所有の小型舟艇「北斗」を用いて海洋調査を実施し、駿河トラフの水深1,430~2,070mの3地点(右図参照)から28個体のクサウオ科魚類を採集しました。これら28個体の胸びれや尾びれの形状などの特徴が、既に知られている他の種と異なることから、同研究グループは新種として報告しました。

なお、本種の「ruficometes(ルフィコメーテス)」という学名は、ラテン語の「rufus(赤っぽい)」と「cometes(彗星)」を組み合わせたもので、赤いインクを垂らしたような体色と長く伸びた尾びれに由来しています。

 本学では、自然と調和した社会の発展に寄与し、人類の恒久平和と福祉の向上を実現するために、平和目的の原則に沿った研究倫理のもとで、自由で活発な研究を推進しております。この度の新種発見もそうした考えに基づいて行われた研究の成果です。

■研究者略歴
氏名   :村﨑 謙太(むらさき けんた)
所属・身分:東海大学大学院生物科学研究科博士課程2年(福井篤研究室)
専門分野 :魚類学
研究テーマ:クサウオ科魚類の分類学的研究
研究内容 :主に駿河湾に出現するクサウオ科魚類の仔魚から成魚までの形態や生態を調べ、分類学的研究を実施している。
      2017年11月にも、駿河湾から新種のクサウオ科魚類「スルガビクニン」を発表している。
所属学会 :日本魚類学会

氏名   :福井 篤(ふくい あつし)
所属・身分:東海大学海洋学部水産学科生物生産学専攻 教授
専門分野 :魚類学、資源生物学
研究テーマ:海産魚類の個体発育と体系学(初期生活史や深海性魚類の分類学的研究)
研究内容 :◆外洋性の仔稚魚の個体発育や中深層性魚類の分類
       北西太平洋外洋域に出現するダルマガレイ科などの外洋性仔稚魚の形態、発育を明らかにしている。
       仔稚魚の研究過程で、ダルマガレイ科、デメニギス科、およびハダカエソ科などの計9種の新種記載を行っている。
      ◆駿河湾の中深層性魚類および深海底棲性魚類の分類と形態
       駿河湾陸棚斜面の近底層および駿河トラフにおいて、仔稚魚から成魚までを採集できる方法を開発し、
       小型舟艇の「北斗」や海洋調査研修船「望星丸」を用いて、調査を実施。 今まで知見がほとんどなかったソロダラ科や
       セキトリイワシ科などの個体発育を明らかにしている。 その過程で、約7種の日本初記録を報告している。
      ◆駿河湾産サクラエビの資源量モニタリング
       コホート解析によって、駿河湾における1999年級以降のサクラエビの加入量を推定し、モニタリングしている。
担当授業科目 :魚類学、生物統計学、資源生物学、海洋実習IIIなど
所属学会   :日本魚類学会、水産海洋学会、日本水産学会
主な論文・著書:・「Early ontogeny and systematics of Bothidae, Pleuronectoidei.」
        ・「日本産稚魚図鑑第2版 沖山宗雄編」東海大学出版会


氏名   :髙見 宗広(たかみ むねひろ)
所属・身分:東海大学海洋学部水産学科 非常勤講師
専門分野 :魚類学
研究テーマ:深海性魚類の分類学的研究、駿河湾の深海性魚類相に関する研究
研究内容 :◆深海域の調査や博物館等における標本調査によってセキトリイワシ科、アシロ科、
       クロボウズギス科などの未記載種や日本初記録種を発見し、記載報告している。
      ◆大学の調査船、底曳網漁、遊漁船などに乗船し、様々な方法で深海性魚類を収集している。
所属学会 :日本魚類学会

■この件に関するお問い合わせ
東海大学清水事務課 担当:石田・石神・逆井
TEL.054-334-6913(直通)

▲採集地点(駿河湾〔静岡県〕

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