【お知らせ】 クサウオ科魚類の新種発見 「フジコンニャクウオ」と命名 ~駿河湾から日向灘の深海に生息 7月30日から標本を特別展示~

2022年07月08日

東海大学海洋研究所の村﨑 謙太〔むらさき けんた〕助教を中心とした研究グループが、クサウオ科魚類の新種を発見し「フジコンニャクウオCareproctus tomiyamai」と命名しました。この研究成果をまとめた論文が、6月21日(火)付で日本魚類学会発行の国際学術誌『Ichthyological Research』のオンライン版(https://doi.org/10.1007/s10228-022-00879-w)に掲載されました。

本研究で最初に調査対象となったのは、東海大学海洋科学博物館学芸員の冨山晋一〔とみやま しんいち〕が村﨑助教に提供した1個体の標本で、2018年5月に地元漁師が駿河湾の深海から捕獲したものでした。クサウオ科魚類は体が柔らかく、小型種が多いため標本の観察が容易ではありません。また、本科の分類には学術上の混乱が生じており、種を特定することが非常に困難です。そうした中、村﨑助教らの約4年におよぶ研究によって、歯や胸びれの形状、腹部にある吸盤の大きさなどの特徴から上記の標本が新種であることがわかりました。
さらに、高知大学が所蔵している魚類標本の中から、土佐湾と日向灘で採集されたフジコンニャクウオが3個体発見され、本種が駿河湾(静岡県)から日向灘(宮崎県)の水深600~808mに生息していることが明らかとなりました。

 なお、7月30日(土)から8月28日(日)の期間、「フジコンニャクウオCareproctus tomiyamai」の標本を東海大学海洋科学博物館(静岡県静岡市清水区三保2389)にて特別展示いたします。

本学では、総合学園としてのリソースを活用し、集いと交流をとおして教育・研究の成果を広く社会に還元し、より良い地域社会づくりに寄与していきたいと考えています。本研究も、そうした本学の考え方を体現するものです。

村﨑謙太助教のコメント

 新学名の種小名「tomiyamai」は、今回の研究を始めるきっかけを作った冨山学芸員に敬意を表して付けました。また、新和名の「フジコンニャクウオ」は、①冨山学芸員の名字が「富嶽」や「殻集山」など“冨(富)”に関連した別名を多く持つ「富士山」を連想させること、②新種の体が蒟蒻(こんにゃく)のように柔らかいことから命名しました。
 2017年以降、私たちの研究グループは日本近海から計7種のクサウオ科の新種を発見しました。人間の生活圏からごく近い海で、新種の魚が続々と発見されることは学術的にも興味深く、世界的に見ても非常に稀なことです。このような研究を行うには、漁業関係者を中心とした地域の方々、博物館の学芸員、大学の研究者という三者の連携が極めて重要であると考えています。

■論文情報
論文タイトル : A new snailfish of the genus Careproctus (Cottoidei: Liparidae) from the Pacific coast of southern Japan
著者 : 村﨑謙太(東海大学海洋研究所 助教)
   甲斐嘉晃(京都大学フィールド科学教育研究センター 准教授)
   遠藤広光(高知大学理工学部生物科学科 教授)
   福井篤(東海大学海洋学部水産学科 教授)
掲載誌 : 『Ichthyological Research』 オンライン版(2022年6月21日掲載)
DOI : https://doi.org/10.1007/s10228-022-00879-w
URL : https://link.springer.com/article/10.1007/s10228-022-00879-w


■論文著者略歴
氏名 村﨑 謙太(むらさき けんた)
所属・身分 東海大学海洋研究所 助教
研究分野 ライフサイエンス 多様性生物学、分類学
主な論文 ・岩手県沖から採集された日本初記録のクサウオ科魚類Osteodiscus andriasheviチョウジャハリバンクサウオ(新称)
        ・Redescription of the Snailfish Careproctus rhodomelas (Cottoidei: Liparidae), with Ontogenetic and Distributional Notes
所属学会 日本動物分類学会、日本生物地理学会、日本魚類学会

<本件に関するお問い合わせ>
東海大学スルガベイカレッジ静岡オフィス
企画・広報担当:山本、逆井
TEL.054-337-0144

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