東海大学、近畿大学、高知大学の研究グループ  北太平洋からの報告記録がなかった深海魚アズマギンザメ属の1種を日本から初めて報告~アズマギンザメ属の学名見直し。和名のない種の新標準和名を「ヨミノツカイ」と提唱~

2019年07月19日

「ヨミノツカイ」の標本(全長501 mm)
東海大学海洋学部助教の中山直英、ならびに近畿大学農学部松沼瑞樹助教、高知大学理工学部遠藤広光教授らの研究グループでは、これまで北太平洋からの報告記録がなかった深海魚・アズマギンザメ属(学名:Harriotta)の1種を日本から初めて報告いたしました。また、アズマギンザメ属全2種における従来の学名の抜本的な見直しを行うとともに、和名のない状態となった種「Harriotta raleighana」の新標準和名として「ヨミノツカイ」を提唱いたしました。さらに、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の深海探査船が撮影した同2種の映像記録を解析。2種の生息水深や遊泳行動の違いを明らかにいたしました。なお、これらの研究成果をまとめた論文が、日本魚類学会の学会誌『Ichthyological Research』オンライン版に、7月10日(水)付で掲載されました
(DOI:10.1007/s10228-019-00703-y)。

■本研究成果のポイント
・従来、日本産のアズマギンザメ属としては「アズマギンザメ」のみが知られていた。しかし、同研究グループが南日本(日向灘)から得られた標本を調べたところ、外見的に区別できる2種が含まれることが明らかになった。そこで、この2種の学名を改めて整理するとともに、和名がない状態となった種「Harriotta raleighana」の新標準和名として「ヨミノツカイ」を提唱した。

・アズマギンザメ属を含むギンザメの仲間では、オスの交尾器の形状が種を見分ける重要な特徴となる。今回の論文の中で、これまで知られていなかった「ヨミノツカイ」の交尾器の特徴を初めて報告。本種はアズマギンザメよりも交尾器が相対的に大きく、より小さい段階で性成熟することなどを明らかにした。

・「ヨミノツカイ」は採集記録に乏しく、博物館に所蔵されている標本も少ないことから、生態や行動が謎であった。同研究グループはJAMSTECの深海探査船が撮影した映像記録に着目。137件の映像記録を解析し、北西太平洋において「ヨミノツカイ」は「アズマギンザメ」よりも生息水深が深く(ヨミノツカイ/水深1535–2611m、アズマギンザメ/水深906–1654 m)、水深1600m前後では2種とも生息することを明らかにした。また、2種の遊泳行動も比較。その結果、高速遊泳時の尾部の傾きが異なり、この差異は2種の尾鰭の発達状態の違いに起因すると結論付けた。

■論文情報
論文タイトル:A preliminary review and in situ observations of the spookfish genus Harriotta (Holocephali: Rhinochimaeridae)
著    者:中山直英(東海大学海洋学部海洋生物学科 助教)
       松沼瑞樹(近畿大学農学部環境管理学科 助教)
       遠藤広光(高知大学理工学部生物科学科 教授)
掲  載 誌:『Ichthyological Research』 オンライン版(2019年7月10日掲載)
        https://link.springer.com/article/10.1007/s10228-019-00703-y
        https://doi.org/10.1007/s10228-019-00703-y
        ※本研究の一部は科学研究費助成事業(JP18K14509)の支援を受けて行いました。

■研究者略歴
氏   名:中山 直英(なかやま なおひで)
所属・身分:東海大学海洋学部海洋生物学科助教
専門分 野:系統分類学、多様性生物学、魚類学
研究テーマ:深海性魚類の系統分類学的研究、静岡県の海産魚類相
研究内容 :「分類学」と「形態学」を基軸に、深海魚を含む魚類の多様性を探求
所属学会 :日本魚類学会、日本動物分類学会

氏   名:松沼 瑞樹(まつぬま みずき)
所属・身分:近畿大学農学部環境管理学科農学研究科 助教
専門分野 :魚類分類学
研究テーマ:魚類の分類に関する全般
研究内容 :ミノカサゴ類など浅海性魚類の分類を研究
所属学会 :日本魚類学会、日本動物分類学会、日本生物地理学会

氏   名:遠藤 広光(えんどう ひろみつ)
所属・身分:高知大学理工学部生物科学科 教授
専門分野 :魚類分類学、系統学、形態学
研究テーマ:海産底生性魚類の分類学的研究
研究内容 :とくに、ニギス目、タラ目、アシロ目およびアンコウ目魚類の分類を研究
所属学会 :日本魚類学会、日本動物分類学会、アメリカ魚類両生爬虫類学会、日本生物地理学会、土佐生物学会

■この件に関するお問い合わせ
東海大学清水事務課 担当:石田・石神(いしがみ)・逆井(さかさい)
TEL.054-334-6913(直通)

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