「病理医」または「病理検査」と聞かれても「知らない」と言われる方がほとんどではないでしょうか?(^^;
血液検査や尿検査に比べてあまり耳になじみの無い検査です。
その訳は、癌の発見・診断を目的として行われるものが大半だからではないでしょうか。
この中で代表的な組織診について、お耳に馴染みのあるところで例えてみましょう。。。。
胃カメラの検査を受けたことはありますか?
患者さんが病院に来院されると、適切な治療のための適切な診断が必要になります。
採血や採尿、レントゲン写真撮影などの他に場合によっては、内視鏡検査・組織生検などを行います。
もしその際に胃や腸に病気(病変部)がみつかると、そこから針の先ぐらいの大きさの組織をつまんできます。
その生体組織を特殊処理し、顕微鏡で検査して、「癌か?」「潰瘍か?」「炎症か?」良いものであるのか?悪いものであるのか?を診断します。
この判定診断では、顕微鏡を使い生体組織の構造から良性・悪性を見分け診断をいたします。このため、患者さんの体より採取された細胞や組織は、ガラス標本をつくるため特殊処理をされ、観察に適する極薄く、構造が把握しやすい厚さに切られ色を染められます。この標本を顕微鏡で観察して診断するのが病理診断です。
その結果を受けて各臨床科での治療方針が決まって行きます。
病理検査の対象になるのは胃だけでなく、全身のほぼ全ての臓器、組織です。
病気には炎症や腫瘍など、多くの種類があります。腫瘍というと怖いもののイメージがありますが、良性や悪性、その中間のものなど様々な状態(段階)のものが存在します。
その治療方針決定のため、病理診断には豊かな知識をもった専門の医師が必要となります。
この様に患者さんと接し、体の状態から診察(診断)するのではなく、患者さんの病気の部分そのものズバリ!を診断し、その後の治療方針の方向性を決定する、とても責任の大きい診断(検査)なのです。
他科の医師の様に患者さんと直接接する機会はなかなかありませんが、病気を治すために努力している縁の下の力持ち(と自負しています)です。
しかし病理診断は、主治医に報告されることで治療に生かされます。治療方針を左右する程の最終診断としてとても大きな役割を担っています。結果、深いところにて患者さんとつながり、接しております。
より良質の医療提供につなげるため、正確・迅速な診断を心掛けています。。
「知らなかった」という方もたくさんいらっしゃると思いますが、この様な医師も病院の中に居るのだと、この機会によろしくお願いします。
病理診断・検査とは、病気の確定診断と本態解明を目指す検査です。
そのために様々な手法を用いてミクロの世界を探求し、組織や細胞の変化を調べます。
病理診断には大きく分けて以下のようなものがあります。
胃や大腸・肺の内視鏡検査を行った際に治療方針を決めるため、病変の一部をつまみ採ったり、皮膚などに「できもの」ができたときにその一部をメスなどで切りとったりして、病変の一部の組織を標本にします。
この検査を「生検」と言います、またその診断を生検組織診断とよびます。
手術が適応され摘出された臓器・組繊の診断
各種、手術にて摘出された臓器・組織は、そのまま捨てられてしまうことは決してありません。
病理診断検査部門に送られ、病理医が病変の部位、大きさ、性状、広がりを確認し、その組織から診断に必要な部分を最少限にて採取します。
国家資格をもつ臨床検査技師が、採取されたこの臓器・組織の顕微鏡標本をつくります。
この標本を病理医が顕微鏡で観察し、どのような病変がどれくらい進行しているか、追加治療が必要かどうか、がんの場合、手術でとりきれたのか、タチの悪さや転移の有無など、治療方針の決定に役立つ情報を臨床医に提供します。
先に触れましたが、最終診断という意味合いはここにあります。
病気の部分そのものを顕微鏡にて診断するため、確定診断になるためなのです。
肺がんや膀胱がんでは、痰や尿の中にがん細胞が混じることがあります。
痰や尿の細胞1つ1つを顕徹鏡で調べて、がん細胞がいるかどうか?を判断するのが細胞診断(細胞診)です。
子宮がんの検診では子宮頚部から細胞をこすり採って、のどや乳房などにしこりがあると、細い針を刺して吸引し、採れた細胞の中にがん細胞がいるかどうかを調べます。
手術前に生検組織検査が行えない場合、病変が深い部分にあるために生検が難しい場合など。
また手術中に腫瘍(できもの)の良し悪し、病変がとりきれたかどうかの確認や、がんの転移が疑われる部分(リンパ節など)を調べて手術で切除する範囲を決めたりするときにも、術中迅速診断は役立ちます。
術中迅速診断では、手術中に採取された組織から15分程度で病理診断が行われます。
手術室から搬送された検体は、病理技師(臨床検査技師)によって、-30度で瞬時に凍らされ凍結標本作製されます。これを病理医が診断し、診断結果は直接執刀医に連絡されます。
その結果によって時には、術式(手術内容)が変更されたり、切除範囲を少し広げたり手術の方向自体が変わることがあります。
手術室と一体になり、分刻みで診断をし、患者さんにとってより良い方向へ導く、重要な検査です。
ご遺族の承諾のもとに、病死された患者さんのご遺体を解剖させていただくのが「病理解剖」で、剖検ともよばれます。
資格を有する病理医と臨床医で生前の病気経過と治療の状況などを検討し、生前の診断は正しかったのか?どのくらい病気が進行していたのか?適切な治療がなされていたのか?治療の効果はどれくらいあったのか?死因は何か?といったことを判断します。
事故や犯罪がからむ法医解剖や医学生の教育のために献体していただく系統解剖とは異なるものです。
このように病理解剖では、疾病の原因、本態、診断及び治療効果などの究明を主目的としており、今後の治療と診断にも役立たせていただいています。
「病理診断」は「病理解剖学」を基盤として成り立っています。
人体のすべての臓器を診て総合的に判断する機会というのはとても貴重であり、その後の診療に役立つ役割を果たす病理解剖は、臨床レベルの向上には必要不可欠なのです。
現在の臨床医学は過去の病理解剖の積み重ねの上に成り立っている、といっても過言ではないでしょう。
病理診断は医師免許が必要な"医行為"です。
正しい診断、適切な治療を行うためには、正しい病理診断が必要であり、臨床医と病理医、また的確できれいな標本を作製する臨床検査技師の連係プレーが欠かせません。
大磯病院には病理学会認定の専門医や細胞診スクリーナーが常勤しているので、無駄がなく必要かつ十分な手術が出来る体制をとっています。
東海大学医学部付属大磯病院
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