微小血管狭心症について
狭心症は心筋に血液を供給している冠動脈が狭くなり十分な血液が送れなくなった時に生じます。これには従来、血管内に脂分が蓄積して物理的に狭くなる労作性狭心症と普段は血管に問題はないが発作時に血管が痙攣(収縮)して狭くなる冠攣縮性狭心症の2種類があります。これらはニトログリセリンが有効なことが多いので、これまでニトログリセリンがきかない胸痛は狭心症ではないと考えられ、心臓神経症とか肋間神経痛などと診断されることもありました。狭心症としてニトログリセリンがききにくい微小血管狭心症の存在が知られています。持続性に胸が苦しくなる狭心症の症状を訴える患者さんの中には、微小冠動脈が原因となっている方がいることが近年明らかになりつつあります。
カテーテル検査での冠動脈造影や冠動脈CTで見える冠動脈は解像度の問題で本幹が3mm程度、小さい枝で0.3mm程度ですが、それ以下の細い心臓の筋肉の中を走る微小冠動脈に痙攣(収縮)が起こることが原因の一つと考えられています。0.3mm以下の血管の攣縮にはニトログリセリンの効果が弱いことが知られています。
持続性の胸部違和感がある方でなかなか診断がつかず病院を転々とする方もあります。女性の場合は更年期にこのような微小血管狭心症(冠微小血管攣縮など)が起こりやすいと言われています。女性ホルモン(エストロゲン)は血管の拡張と関係があり、閉経前後に急激に減少し、血管が攣縮(収縮)しやすくなり、胸部症状が起こると考えられています。これ以外の時期でも30歳代からはじまり、60歳代以降でも発症することがあります。男性でも同様に微小血管狭心症は起こります。
心臓カテーテル検査時の薬剤負荷(アセチルコリンかエルゴノビン)により診断します。
薬剤負荷時に日常で生じる胸痛や心電図の虚血性変化は認めるが、血管造影上では冠動脈の攣縮が認めない状態で、負荷により右心カテーテルによる冠静脈洞血の乳酸の値が上昇することが心筋内虚血の証明となり、微小血管狭心症(微小血管攣縮)の診断がつきます。当院では心臓カテーテル検査の時に冠攣縮誘発テストを行い、冠攣縮性狭心症および微小血管狭心症の精査を積極的に行っています(年間100-150例)。
内服薬による薬物治療、禁煙などの生活指導が中心です。血管拡張薬のなかのカルシウム拮抗剤が有効な場合が多いですが、他の薬剤が必要なこともあります。症状により多剤併用を行うこともあります。
心筋架橋は、冠動脈の表面に筋肉の層が重なる先天性の疾患です。これまでは良性の疾患と認識されていますが、人によっては胸痛の原因となることが知られています。
労作時など、頻脈時に胸部症状が出やすく、冠動脈自体には狭窄が認められないことも少なくありません。
また、正確な有病率は判明しておらず、診断率が低いこともこの疾患の特徴です。
血管内超音波検査での視認が必要ですが、当院ではそれ以外の検査でも診断あるいは重症度判定を試みています。
内服薬(β遮断薬)が第一選択ですが、個々の症例に応じてカスタマイズする必要があります。
東海大学医学部付属大磯病院
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